2006年10月15日

今の玄関の引き戸は十数年前に新しくした時に初めて鍵を付けた。

それまでは
玄関の内側で片方の戸からもう片方の戸に5cm位の小さな棒を渡す形だった。
鉄製のその鍵をカチャって架けると引っかかってもう玄関は開かない。
外から開けるときは戸の合わさった隙間に固めの紙を入れて、
それでその棒を持ち上げて外してた。

昔のうちの鍵は“閂(かんぬき)”
雨戸だって木で十字に組まれた“閂”だった。
簡単なんだけどしっかりしていて問題はなかった。



引き戸を新しくした頃だったと思う。
門も新しくして門の鍵も初めてつけた。

鍵を持たされたのはその時が初めてだった。
何だか家に似合わないって違和感を感じたものだった。



それからいつも持ち歩いた門と玄関のうちの二つの鍵。
その日の朝鍵を閉めたらもう どこも開ける事が出来ない鍵になった。


うちを見るのもこれが最後だった。


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2006年10月13日

引き戸

家の玄関は引き戸。
すりガラスがはめ込まれた木で出来ている扉。

中央で合わせる二枚の戸をそれぞれを左右に引くと壁の内側に収まる為、
二枚とも開けると全開になる。
天気のいい日はよく開けっ放しにしていた。

大勢の人の出入りも全く問題なくしてくれる引き戸。
開放感のある広い玄関。

私の一番好きだった場所。



すりガラスは外の様子も透かして見せてくれる。

家を出る日はいいお天気だった。


木で出来た敷居の上を滑らせて引き戸を開ける。

敷居には「乗っちゃダメ」って小さい頃よく怒られたっけ。



思い出を振り返り、家を振り返って引き戸を閉めた。


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2006年10月12日

最後

眠れずに迎えた引越しの日。
どしゃ降りの朝だった。


住み慣れた家の中から大事なものがどんどん運び出される。
雨の上がった午後には見慣れた物がみんな無くなった。

空間が広くなると声が響くんだって初めて知った。



柱や壁の傷、それに廊下の凹みも修復の跡も
そこに住んでた人の歴史と思いが刻まれている。

忘れないように家の中を隅々まで見て触って歩いた。





門を入ると木々が植わり金魚の泳ぐ池のある庭がある。

黒い丸石の敷き詰められた広い玄関。
飾られた大きな連獅子の羽子板はお気に入りだった。

南側に取られた一面の窓とピカピカに磨かれた廊下。
奥の部屋には昔は足踏みミシンが置いてあった。

ピシッと貼られた障子。
それに囲まれた鴨居のある『テレビの部屋』
そこには子供の頃お稽古していた黒いピアノがあった。

家での時間は古い柱時計が知らせてくれていた。

何年か前に綺麗になった『おかって』
その奥はお風呂場。
手前は縁側に続くいつもおばあちゃんがいた『四畳半』だ。


でももう、どこにも何にもない家。




階段を使って二階へ上がる。


西日の入る和室の窓に雨上がりの夕焼けがあたってた。
家の中も家の外もピンク色に染まる一時。

窓を開けて私も家と同じ色になった。


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翌日から壊れていくこの家にその日、私は一人で残った。

離れたくない眠りたくない最後の夜。
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2006年10月11日

からっぽ

何にもなくなった家の中。


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柱時計を外す。

使い続けたいくつかの家具だけがここに残る。


色の変わった畳とまだ色の白い障子。

今日もピカピカの廊下。





そこら中から感じる木の温もり。

何にもないけど人気のある我が家。
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2006年10月06日

裏木戸

表のブロックの塀は裏に抜けられる横の道まで続いてる。

表には門。  横には木戸の裏口がある。


ちいさな扉は腰を屈めなければくぐれない。
錠は木で出来ていて中からしか開けられない裏口だった。




私の知らない昔は表も木の門だったみたい。
この扉と同じ木で出来ていたのかもしれない と思った。






裏木戸は随分昔から使わなくなっていた。

錠を外してみても もう開かなかった。


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2006年10月05日

瓦屋根

子供の頃、裸足で二階の窓から屋根に乗った。

乗った記憶はあるのにどうして乗ったのか思い出せない。
でも、一人だったような気がする。



うちの屋根はみんな瓦。

嵐のような雨風が吹いた日もあったし柱時計の止まるような地震もあったけど
家の瓦は一枚も剥がれていない。


しっかりと屋根に乗ったまま
年月と共に日に焼けて色が変わってきた赤茶の瓦。  

瓦屋根が家に表情を付けてくれていた。




三角屋根の瓦屋根。

家が 人の住む家の顔をして見える。


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2006年10月04日

富士山

二階の窓の外には手すりがあって、うちの布団はそこに干していた。

お布団がふかふかになる南向きのそこ。


外からみたらそこには富士山が描かれている。
雲もスーとかかってる。

何十年も前に造られた家に溶け込んでいるうちの富士山。


あかぬけたデザイン。  昔の人のちょっとした遊び心。


誰の考えだったんだろう。

いかしてる。


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2006年10月03日

三面鏡

着物のタンスと洋服ダンスと三面鏡。
お揃いで母がお嫁に来る時に持ってきた嫁入り道具。

新婚当時は二階の部屋に並べて使ってたみたいだけど
母の部屋が一階になって三面鏡だけ移動した。



鏡が身近になかった小さい頃は時々三面鏡を覗いてた。

横顔が見えるのが不思議でそれが妙に大人の気分にさせられた。

ちょっとだけって
母の口紅をこっそりつけてみたのもこの鏡に向かってだった。




何十年も使い続けたのにどこも全然痛んでいない。
いい物なのか昔の家具はとっても頑丈。

何十年も母と一緒だったのに これでお別れ。




引越しのその日の朝まで母を写していた三面鏡。


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2006年10月01日

神棚

家の一番奥の一番高い所に東を向いてあった神棚。

毎月お一日にはお榊を飾っていた。

年末には綺麗に掃除し、しめ縄を新しくして
お正月には破魔矢(はまや)を買ってきた。

日々手を合わせる事はなかったけど
一年の生活の中で確実に身近にあった神棚。
家族の集まる部屋にあったから毎日見ていた。


長い間家を身守ってくださったんだと感謝する。




神棚も家と一緒に生きてきた。


家と一緒に壊れていく。


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2006年09月30日

タンス

両開きの扉にも引き出しにも鍵穴がついている私のタンス。

昔のタンスはみんなそうだったんだって。


私のタンスは今は亡き叔父さん、信ちゃんのお下がり。
もう捨てればって言われながら幼い頃からずーと使ってきた。


引出しはスムーズに引き出せないし扉を開ければキーって鳴る。
洋服なんていくらも入らない。

それでも使いつづけた使い勝手の悪い使い慣れた洋服タンス。



外側も内側も木が剥げてきていたけどしっかりした造り。
床に根を下ろしているかのように押しても揺らしてもビクともしない。

私はこのタンスで充分だった。



机も棚もみんな運び出されてタンスが残った。

みんな無くなったのにいつもと変わらずそこにあるタンス。

堂々とした凛々しいタンスがいつもより大きく見える。




このタンスはここでお別れ。

そう決めていた私に
「いいんだよ。わかってるよ」 って、タンスが覚悟を決めているかのように見えた。



家と一緒に残る私のタンス。


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2006年09月29日

明り取り

階段を上った二階、壁の上の方に明り取りの窓がある。


朝はここから光が入る。
雲の出ていない夜も月明かりで階段の電気は必要なかった。
昼間だってこの窓があることで二階が明るかったんだと思う。

でも気にしていなかった。
そこにあるのが当たり前だった窓。



荷物が運び出されガランとした二階を見回して
その存在に目を止めた。


手を伸ばしても届かない高い所にある明り取りの窓。

家の中からも外からも掃除はしてこなかったと思う。



それでも見上げたら水色の空が見えた。


汚れたガラスの向こうにきれいな秋空が見えた。

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2006年09月28日

キーホルダー

祖母は叔母さんによく旅行に連れて行ってもらっていた。


お土産はいつもキーホルダー。
神社やお寺さんの名前の入った鈴が付いている物だった。





本棚の奥の小さな箱にギッシリ入っていたキーホルダー。


子供の私は鍵も持っていなかったし好むデザインではなかったからか
使っていなかったのかもしれない。

でもきっと一つ残らず取っておいたんだと思う。

祖母が「お土産だよ」って笑って渡してくれたその顔を
今思い出す事が出来るから。



押し入れから弟が使っていた道具入れが三つ出てきた。
開けてみるとそのうちの一つの中にもキーホルダーが沢山入っていた。

それは
祖母が弟へ買ってきてくれた私とお揃いのキーホルダーだった。

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2006年09月26日

ぽっくり

床の間の床柱の横、地袋(物入れ)の奥からぽっくりが出てきた。

七五三の時に作ってもらった物だ。
以前探した時には見つからなかったのに、こんな所にあった。



漢字で「木履」と書くぽっくり。
底がくり抜いてあって歩くとカッポコカッポコ軽快な音が出る。

小さな女の子が履くと本当に可愛い。



一生に一度の七歳の七五三。

晴れ着を着せてもらって日本髪を結って、赤い口紅をつけてもらった。
千歳飴を買ってもらってぽっくりを履いて歩いた。

一度しか履いた事がないのにこれは私のぽっくりだって記憶が蘇る。

綺麗な物に囲まれた七五三だったと思い出す。



親戚中の思いが込もった晴れの日だったと
         今だからこそぽっくりを見て思った。

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2006年09月25日

二階

南側の窓に沿って廊下が大きく取られた二階。
部屋は二つ。
奥の部屋にはダブルベットが置かれていた。

最初は新婚の両親の部屋だった。



私が小学校に上がる時、
手前の部屋に二段ベットが置かれて妹と私の二人の部屋になった。


中学に上がってから二階の部屋は四つになった。

二つの部屋を妹と私がそれぞれ使う。
そのうち、もう一つの部屋を弟が使った。


その時々で変わってきた二階。

ベットに机に本棚に、重たい物ばかり置かれていたから
傾いたり凹んだりするところがあった。



一つ一つ荷物を片付けて大きな家具を退かしていくと
どんどん空間が広くなる。

青い畳が見えてきて
この家から 見慣れた物がなくなっていく。

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2006年09月24日

庭の路

庭は歩けるようになっている。
この家に住んでいた家族が何度も通った路がある。

踏み固められて、それでも芽が出る苔の生えてる土の路。

左右には石で囲われて木々が植えられている。
大きく葉を広げる太い幹の木から小さな花をつける草まで、それは様々。



春にほろほろと咲く八重桜は
弟が生まれた年に記念にって両親が苗で買ってきた物。
今では玄関を軽く越える程大きくなった。

池の横には椿の木がある。
花がポトンて落ちるから好きじゃないって昔叔母さんが言ってた木。

大きなつげの木は
茂ってくると父が三脚に登って枝切り鋏で整えてくれていた。




沢山の庭の植物。

土の下で根を張ってみんなで一緒に生きてきた。




庭もまた、父と母が手を掛けてきたものだった。

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2006年09月18日

金魚と池

庭には金魚の泳ぐ池がある。

生まれた時から金魚の居る暮らしだった。


小さい池でも金魚にとっては広い住みか。
水槽と違って日を浴びてみんな伸び伸び生きてきた。


朝一回の餌の時間、
池の縁の石をトントンって叩くと口をパクパク開けて寄って来る。

赤い金魚に白い金魚。
赤・黒・紫とまだら柄の金魚も勢い良く寄って来る。

毎朝和む無邪気な姿。



“りょうま”がいなくなってから近所の猫が来るようになったので
金魚を守る為に池に網を張った。

お尻をフリフリ長い尾びれをゆらゆらさせて
住み慣れた池を自由に泳ぐうちの金魚。




庭の真ん中。 石燈篭のある池。



網を外して金魚を出したら ガランとして大きく見えた。

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2006年09月16日

縁側

ぽかぽかと日差しが降りそそぐ縁側。


四畳半にいつもいたうちのおばあちゃんとおしゃべりをしに
近所のおばあちゃんがよくここに座っていた。
横向きに腰掛けて、よくお茶を飲んでいた。

毎日のように誰かが座っていたから
近所の人はみんな顔見知りだった時代。



学校帰りにすぐに遊びに行くからってランドセルを家に置くのはここから。
玄関は使わず縁側から出入りしてた。

夏のスイカは縁側で食べるって決まってた。
三日月型に切ってもらったスイカを両手で持って、種は飛ばし放題だった。

花火もよくやった。
おばあちゃんは一緒にやらないけど縁側から座って見ていた。

そう、臼でついたつきたてのお餅はここで丸めたんだった。


みんな昔の思い出。



雨風に打たれ朽ちてきた縁側の板。

ここから出入りする事もここに腰掛ける事もなくなった。




日差しが今日もぽかぽか降りそそぐ、古い縁側。

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2006年09月15日

おそろい

母方の祖父はいつも和服を着ていた。

運動会にはいつも見に来てくれたおじいちゃん。
懐中時計を帯に挟んだ粋な着流しは写真で今見てもかっこいい。

家に来る時はいつも突然。
日が暮れてからフラッと来てサクッと帰る。

お土産はいつも二つ。 妹とお揃いで買って来てくれた。
お人形もおもちゃも、いつも二つ。 
大きな箱を両手に下げて来てくれるおじいちゃんだった。


家には何でも二つあったおそろいの物。
おもちゃはとっくにないけれど綺麗な日本人形はこの前お別れした。
残っているのはこの人形だけ。

子供が抱えるほどの大きな赤ちゃん人形。
小さい頃は気に入っていていつも一緒だった。
何年も前の人形。

今はテレビの部屋に飾られて
季節ごとに母が洋服を買ってきて着せ替えている。

私と妹なんだって。





麦わら帽子ももう終わり。

母が大事そうに袋に入れた。


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2006年09月14日

おかって

リフォームする前は古い木造の部屋。
四畳半との間に壁があった。

台所でもキッチンでもなく、そこは『おかって』だった。


壁一面の食器棚は扉を開けるのが重かったし、
ビール瓶が入っていた縁の下の木の板を開けるのは
 何かいるんじゃないかっていつも恐かった。

でも、今思い出すと懐かしい古い『おかって』


数年前に綺麗になって母はとっても喜んだ。

フローリングに傷がつかないようにって
テーブルの足にも椅子の足にもテープを貼った。

新しい『おかって』を大事にしようと
床も壁も、拭いて磨いていつでもピカピカ。

『おかって』が綺麗になっただけで家が生まれ変わったようだった。



『おかって』は昔も今もきっと家族が一番使った部屋。



あと何回・・・。

いつもの指定席に座って数えながらご飯を食べる。

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2006年09月13日

みかんの実

大きなみかんの実が生った。


庭の樹木の中には実の生る木がある。
 柿に梅にそれにみかん。
実をつける年があれば全くつけない年もある。

花も同じ。
花の咲く木のそれぞれは
咲き乱れる程花が咲く年もあれば蕾もつけない年もある。

だからこそ実も花も、見つけた時は本当に可愛い。

人の手で作った物でないものだから
  毎年違う顔がある。



みかんの木に大きなみかんの実を見つけた。
みかんが二つも生っていた。
こんなに大きな実は初めてのこと。


嬉しいやら 淋しいやらのみかんの実。

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posted by オマール at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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